霧と霞と靄、またガスなどとも言いますが、すべて視界が悪いことの表現です。
朝霧・朝靄、霧が晴れてきた・靄が晴れてきた、霧が掛かっている、霞が掛かっているなど良く使いますが、意味の違いはあるのでしょうか?
気になったので調べてみました。
気象観測・予報での霧・もや(靄)・かすみ(霞)の違い
気象観測・気象予報での定義は以下のとおりです。
出典:気象庁HP http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kori.html
・霧: 微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態。
・濃霧: 視程が陸上でおよそ100m、海上で500m以下の霧。
・もや :微小な浮遊水滴や湿った微粒子により視程が1km以上、10km未満となっている状態。
・かすみ :気象観測において定義がされていないので用いない。 (※視程: 水平方向での見通せる距離。)
要するに、視界が悪い順で濃霧・霧・もや(靄)と分類して、かすみ(霞)は使わないということです。
ただ、普通の人は「あ、この視界は1km未満だから霧だな、1km以上だから靄だな」と判断して言葉を使い分けないでしょうし、気象庁も本当に視程を計っているんでしょうかね(笑)
普通の日本人がどのように霧・靄・霞を使い分かてきたかというのは詩歌の歴史・季語をみてみればいいのではないでしょうか。
感性からみた霧・靄・霞の違い
以下、主に山本健吉の「基本季語五〇〇選」の内容を参照してまとめています。
霞は動詞「かすむ」の名詞形です。語源的には「微か」から来ているようで、微かで仄かな現象をいい、濃霧は霞とはいいません。
そのため、遠く微かなもの・ほのかな優しいものを霞といって、例えば遠くの山の中腹に棚引いている薄雲を一般的に霞といいますが、その中に入ってしまえば霧になります。
またおなじものでも、平安以降は春は霞・秋は霧と言って感じを区別するようになりました。 「霞立つ」は春の枕詞です。
ちなみに霞・霧・雲に使われる「たつ」は「顕つ」の意ではっきり目に見えることです。 ただ、「たちのぼる」は霧・雲のみで霞には使いませんし、「たなびく」は雲・霞のみで霧には使われません。 また、霞は夜分には言わず「朧月夜」のように朧という言葉を使います。 歌謡曲でよく使われる「夜霧」に対応する「夜霞」はありません。
用例をいくつか挙げます。
春なれや名もなき山の薄霞 芭蕉
榛名山大霞して真昼かな 鬼城
朝霧や村千軒の市の音 蕪村
白樺を幽かに霧のゆく音か 秋櫻子
靄は霧の薄いものという感じでしょうか。
ガス・ガスるも霧の代用語として使われているようです。
また霧グループ(霧・靄・ガス)は都会でも使われますが、霞は都会では使われず田園的な感じといえるでしょう。
英語との関連で霧・靄・霞を考える
英語で対応する言葉はあるでしょうか?
和英辞書で引くと、
霞 ⇒ (spring) mist, haze
霧 ⇒ mist, fog, haze
靄 ⇒ mist, haze
薄いものから順番は haze mist fog
英和辞書では
haze ⇒ かすみ、もや
mist ⇒ 霧、もや、かすみ
fog ⇒ (濃い)霧、もや
となっていて、 濃い ⇒ 霧 薄い ⇒ 霞、靄 と分類できるようです。
まとめ
季語としては、霞は春で霧は秋と位置付けられている。靄は季語にはなっていません。
濃度の弱い順では、霞・靄が同程度で弱く、霧は濃い。 霞は濃度が靄とおなじぐらいのためか、気象予報では使われていません。
霞は遠方の情景を指し、自然・田園的な背景で夜分以外に使われる。
霧・靄はそのただ中にある時を表し、自然・都会を問わず使われる。
と言えるのではないでしょう。
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